この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第4章 新たな波風

「相手は?」
「……秘密」
「もしかして、ここの客かい?」
「さあ」
あいにく春加はいない。カウンターの奥かステージの裏側で、別の作業をしているのだろう。前のように、邪魔が入らないことをわかってこの中年男は宵に声をかけているのだ。
「ねえ、一度だけでいい。僕に縛らせてくれないかい? 僕ならこんな擦り傷を残したりはしない。君を必ず満足させられる」
男がようやく、掴んでいた手首を離した。
宵は一瞬黙ったが、いいことを思いつき、試してみることにした。
「……たいした自信ですね。いいですよ。貴方の趣味に付き合っても」
「ほ、本当かい?」
男の顔つきが変わった。男の太い喉が生唾を飲み込むように、ごくりと鳴った。
「そのかわり、俺がしたいこともさせてください」
「したいこと、とは?」
「鞭。肉を打つ時の音と、裂けた時に出る血が好きなんです。全身真っ赤になるまで叩きたい。いいですか?」
「いや……それは」
「ーーでは、この話はなしで。良かったら一杯どうぞ」
宵は呆然としている中年男にカクテルを一杯渡し、一礼してカウンターへと向かった。

