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Memory of Night 2
第4章 新たな波風

小声で耳打ちされ、宵は固まる。晃は宵の反応を面白がるように眺めてから、やがて小さく吹き出した。
冗談らしい。
それから春加に向き直り、申し訳なさそうに言った。
「せっかくなんですけど、俺今年受験なんで。医学部目指して予備校とかも通ってるんで、バイトする余裕はないかなあ」
「受験? つくならもう少しマシな嘘つきな、もう成人してるくせに。三、四年前じゃん店来てたの」
そりゃそういう反応になるよな、と宵は心の内で納得する。
どこの世界で中学生が成人済みじゃないと入れない大人のバーの会員になれるのか。
晃は部屋着のポケットから折り畳みの財布を取り出し、中にある学生証を春加の目の前に差し出した。
「ハル姉、ごめんね騙してて。あの頃サバ読んでただけ」
春加は学生証と晃の顔を二回ほど交互に見やり、目をまん丸くした。
「やっば。うちの店のセキュリティゆるゆるすぎ」
「まさか中学生が来るとか店側も思わないよなー」
「ちょっとした好奇心だよ」
晃はなんでもないことのように笑うが、宵も春加も呆れ顔だった。
春加は気を取り直し、こう締める。

