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Memory of Night 2
第30章 花魁ショー

亮は言った。声の雰囲気がいつもと違う。
空き缶や服やごみが散乱して床が見えないような部屋で、亮は足元の物だけを蹴って退かし、春加が腰かけるベッドまで歩いてくる。
目前に立ち春加を見下ろしながら、一言だけだった。
「あんま世話焼かすなや」
目元は一切笑っていなかった。久しぶりに、本気で怒っている姿を見る気がする。
「焼いてくれなんて頼んでない。……もうこのままクビでいいよ」
「……そんなに、彼女のことを聞かれるのが嫌だった?」
亮が問いかける。
春加はつい顔をあげてしまった。
「相変わらずわかりやすい反応をするね。動揺がすぐ顔に出る。君が帰ったあと、宵くんに少しだけ聞いたよ。桃華さんのこと。ーー彼女は君にとってのなんだい?」
頭痛がする。タバコをもう一本咥えようとすると、亮に取り上げられた。
「酷い顔だね。まず、何か食べな」
よく見ると、亮は右手に白いビニール袋を持っていた。
「どうせろくなモン食べてなかったんだろ。消化にいいもの買ってきた」
「いらない」
「なら捨てればいいよ」
亮は袋をベッドに置く。
「クビにはしない。来たくなければ勝手に辞めれば?」
亮の声は終止、突き放すように淡々としていた。
自分が悪いことをしたのだ。優しくしてほしいなんて、甘えたことは言えない。それでも、冷たい言葉が降ってくるたび、キリキリと痛む場所があった。

