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Memory of Night 2
第30章 花魁ショー

「土方さんには、撮影時の緊縛の件、こちらのスタッフがやることになったからってお断りしておいたよ。延期が続いていたアメリア先生の花魁ショーは、次の水曜に決まった。一応伝えとく」
この一週間でそんなことまで。仕事の話をされると、気になってしまう。途中まで進めていたあらゆることが、中途半端で終わってしまう。
「あと、宵くんも心配していたよ」
「……あんたは?」
反射的に聞いてしまった。
亮は意地悪く、目元を細める。
「そりゃ、僕だって心配したよ。何度かけても電話に出ないから。何度も言っただろ? ハルちゃんは僕にとって、大切な人だって」
「店にとって、だろ」
それだって、どこまで本当かわからない。自分がいなくたって、この男さえいれば店はまわるのだ。
あれだけ苦労した花魁ショーの日程決めだって、いとも簡単に亮はやってみせた。
亮は春加の体を抱きしめた。ふわりと漂う整髪料の香りと、亮の匂い。温かさに震えてしまいそうだった。
ーー結局もどりたくなってしまうのだ。
「ーーそんなことない。愛してるよ」
嘘で作られた空っぽな言葉に、ドクドク脈打つ心臓が嫌いだった。
「とりあえず食べて、体調を戻してから出勤してきな」
ようやく少し、声が丸くなった。亮はそれだけ言い残し、アパートを出ていくのだった。
部屋で一人、春加は部屋のドアを見つめる。
まだダメだ。まだ桃華は、春加にとってはパンドラの箱なのだ。

