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Memory of Night 2
第30章 花魁ショー

本当は宵が作ったわけではない。着替えて出てきた時に、キッチンで渡されただけだったが、さっさと土方のそばを離れたくてつい話を合わせてしまった。
宵はカクテルを一杯土方に渡す。
「ごゆ……」
ごゆっくりどうぞ、と続けようとしたところで、ふいに別の声がした。
「俺にも一杯いただけますか?」
言葉と共に伸びてくる手。
振り向いて、宵はぎょっとした。
宵が持つトレイからカクテルを一杯掴み、口に運んでいったのは、なんと晃だった。
「あ、それは……」
アルコールなのだ。だが晃はごくごくと、一気にあおってグラスを空(から)にしてしまう。
止める間もなかった。
サービスドリンク用のグラスなので、それほど量は多くない。ワイングラスの、器の部分が細いタイプのグラスだった。
けれど決して度数は低くないはず。
声をかけようにも、隣にはまだ土方もいる。
二十歳前だとバレてはまずいし、知り合いだということも、言っていいのかどうなのか。
なぜか土方も隣で一気飲みをしていた。
晃の姿を横目で窺い、咳払いを一つ。
「とても美味しいよ。宵くんの手作りかと思うとなおさら。おかわりい、もらえるかな?」
(……頼むから、今リップサービスはやめろ)
晃が目前にいるのに。
案の定、晃も土方に鋭い視線を向け、一言。
「じゃあ、俺ももう一杯」
(そこで張り合うなって!)

