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Memory of Night 2
第30章 花魁ショー

「……なんだよ?」
「ユビキリってあるだろ? 約束をする時に、小指同士を結ぶあれ。ユビキリの由来も、実は遊女達だって説があるんだよ。遊女たちは客の男たちに色を売るのが仕事だけど、客を好きになっちゃうこともあるだろう? 本命への愛を証明するために、遊女は自分の小指を切って相手に渡していた、なんていう話があるんだよ」
「へー」
「……宵の小指は、俺にくれる?」
小声で問われ、絡めた小指を軽く揺すられる。
「何サイコパスみたいなこと言ってんだ、怖いって」
「冗談だよ」
晃は笑った。
それでもしばらくは、お互いの小指をほどかなかった。薄暗いフロアの中で、こっそりと繋いだままでいた。
やがて曲が止み、舞いが終わる。
ショーが終わるのかと思いきや、そうではなかった。両隣の子達が舞台袖に消え、アメリア一人になると座布団と何か楽器のようなものを別のスタッフが用意する。
アメリアは座布団の上に正座し、その楽器を手に取った。それは三味線だった。
やがて再び曲が流れ出す。それに合わせ、アメリアは三味線を演奏した。
なかなか無い音色だった。弦を弾いた時の音のあとの、じんわりと残る余韻。ローズの客たちも静かに聞き入っていた。

