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Memory of Night 2
第31章 来訪者

志穂はふっと寂しそうに笑った。
「もちろん、あなたのやりたいようにしていいわ。ダメと言っても聞かないでしょう?」
「……うん」
宵のこうと決めたら曲げない強情さを理解している志穂は、宵が決めたことに反対することはほぼなかった。
志穂の右手が、そっと志穂自身の腹に触れる。無意識のようだった。
志穂は何かを言いたげに口を開きかけたが、一つも言葉にならずに閉ざす。
それから取り繕うように笑って質問をした。
「ねえ、そういえば宵の進路の話。大学に行くんでしょう? 学部は?
第一志望はもう決まってる?」
「……俺の話はあとでいーよ。それより、そっちの話」
「あ、えっと……」
志穂の表情が曇る。なぜだろうと思う。
ーー宵の予想が当たっていれば、それはとても嬉しい知らせのはずなのに。
宵は不思議に思い、直球に訊ねた。
「ーー女の子? 男の子? そういうのまだわかんねーか」
はっとしたように、志穂が顔をあげる。
「いるんだろ? お腹に赤ちゃん。今何ヵ月?」
「どうしてわかったの?」
「いや、わかるって」
最初から違和感はあった。妊娠中は体型が変わりやすいというし、顔まわりが丸くなったように感じたのもそのせいだろう。

