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Memory of Night 2
第31章 来訪者

もう一つは、カフェイン。
コーヒーは確かにもとからあまり飲まない印象だが、紅茶は好きだったはずだ。なのに最初普通の紅茶を薦めた時、いらないと言った。そこでもしかしたらと思い、晃のために買っていたカフェインレスの紅茶を薦めたら、飲むと。箱ごと渡して選んでもらった時も種類だけでなく裏面を確認していた。あれは本当にカフェインレスか、妊娠中に飲んでも大丈夫なものなのかを確認していたのだ。
おまけに右手が時折お腹をさすっていたので、それはもう誰が見てもわかる。
「すごい、名推理!」
一通り妊娠していると気付いた理由を説明すると、志穂はパチパチと手を叩いた。
「……別に探偵ごっこしてたわけじゃねーの。報告待ってんのに、なかなか言わねーから」
「だって……」
再び志穂の顔が曇る。
妊娠には気付けたが、どうしてそんな悲しそうな表情をするのかはわからなかった。
愛する人との子供を授かったのだ。それは最上級に、幸福なことではないのか。
志穂は強い瞳で宵を見つめた。そうして唐突に立ち上がる。
テーブルを回り込み、座椅子に座る宵のそばまで来て目線を合わせるように膝をついた。
「……何?」

