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Memory of Night 2
第32章 雪

「直感、かな。君となら、店を大きくできる気がして」
昔はもっと違う答えをくれた。まだどこかで、それを期待している自分が嫌だった。
春加はベッドの上に着ていたティーシャツが放り出してあるのを見つけ、上だけを着る。
下着は手の届く範囲内にはなかった。
起き抜けの煙草がほしい。テーブルに置かれた箱に手を伸ばすと、亮の手に阻まれた。
「吸いすぎ。体壊すよ」
「……別にいい」
「ダメだよ。今君に倒れられたら、僕が困る」
「ああ、そっか。新しい店任せられる子、いなくなっちゃうもんな」
春加は亮が持つ煙草を奪い、それを咥える。すでにかなり短くなっていたが、何回かは吸える。
ーー新しい店をオープンさせるから、ハルちゃんにそっちを任せたい。
亮からそんな話があったのは、今年の五月末頃だった。表に立たなくなってから、経理に関して手伝わされることが増えたから、もしかしたらもっと早くから考えていたことなのかもしれない。
二店舗を経営するためには、信頼できる誰かに一店舗を任せなければいけない。自分に白羽の矢が立ったのは嬉しくもあるが、亮の一番は変わらず店だ。それを目の前に突きつけられた気がした。

