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Memory of Night 2
第32章 雪

ーー深夜の住宅街は静かだった。もともと大通りからは外れた場所のアパートなので、普段から騒音は少ない。住宅街のため人通りはそれなりにあったが、深夜だからか今は車すら一台も見ない。
「……おまえ、雪好きだよな」
自然と手は繋ぎながら、夜道を歩いていた。
まだ積もるほどではなかったが、コンクリートは仄かに白かった。外灯の下で舞う小さな粒を眺めながら、宵が言う。
「去年もなんか、初雪の日に連れ出された気がする、朝早くに。しかも日曜」
「あー、あったっけなあ、そんなこと」
晃はわざとらしくとぼけてみせた。
あれは去年の十二月の出来事だ。付き合い始めて、二ヶ月めくらいの時で、まだ一緒に住んではいなかった。日曜の朝、七時に突然晃が連絡もなしに宵のアパートにやってきて、雪が積もっているから遊びに行こうと姫橋神社に誘ったのだ。
あの時も突然の雪で、まだ冬服をしっかり準備していなかった宵は、真冬にしては薄着で連れ出されるハメになった。あの日も晃は今日のように、はしゃいでいた。
「雪が好きっていうか、ちょっと雪の日に嬉しい思い出があって」
「……女?」
「なんでそうなるの? まあ、女といえば女だけど」
「やっぱり」
納得して頷くと、晃は笑いながら詳細を教えてくれた。

