この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第32章 雪

「女って言っても母親だよ。俺の母親、看護師だろ? 昔から忙しい人だったけど、雪が降るとたまに母親が仕事早退して帰ってきたり、休みになったりしたんだよね。小さい子供がいる人は優先的に帰してくれたらしい、病院側の配慮で」
「へー、まあ積もると車動かせなくなるしな」
「うん、それで帰れずに泊まり込みもたまにあったけど。……小学校に上がったくらいかな。母親に雪だるまを作ったんだけど、それをすごく褒めてもらって嬉しかった記憶があるんだよね。だから雪が降ると雪だるまを作って、帰った時に絶対目に入る玄関の前に置いてみたりしてた」
「なんだそれ。すげー可愛い。ちゃんと見つけてもらえた?」
「何回かは。結局仕事早退にならなくて、雨や気温が上がって溶けちゃった時もあったから」
「残念だな」
宵はつぶやいて、笑った。
「なんか意外。ちゃんと子供らしいとこあったんだな」
「もちろんあったよ。当たり前でしょ。人をなんだと思ってるの?」
「だって、苦手なこととかねーじゃん。産まれた瞬間から完璧人間なのかと思った」
「そんなわけないでしょ。ちゃんと子供だった時あったよ。……別に今も完璧なわけじゃない。人より少し器用なだけで。子供の頃の俺、可愛い?」
「うん」

