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Memory of Night 2
第5章 進路

「ーーじゃ、話終わりで」
すっと席を立とうとする宵に、倉木はちょいちょいと引き留める。
「ここからが本題なの。君の進路のことでしょーが」
「だから就職するって」
顎で促され、宵はもう一度座り直しながら答える。その口調から面倒がってるのが垣間見えたが、倉木は続けて問いかける。
「やりたい仕事でもあるの? 希望の職種は?」
「ないけど」
「なのに就職一択? 進学してみる気はない?」
「ない」
即答だった。予想通りの返答ではあった。
南風(なんぷう)高校は進学校ではないので、卒業後就職を選ぶ生徒も多くいる。専門に通う子も、短大を希望する子も、大学を目指す子も、様々だ。三年になると希望する進路によってクラスが別れるが、進学クラスじゃなくたって進学を目指す生徒もいる。
普段、倉木自身そこまで生徒の希望する進路に口を挟むことはしないが、宵には進学を進めてみたいと思っていた。
「今特に就きたい仕事がないなら、進学して、やりたいことを探してみてもいいんじゃないかなって。例えば大学行けば、将来選択できる仕事もぐっと増えるし、仕事に限らずいろんな選択肢が増える。それに……」
そこまで言って、倉木は口をつぐんだ。こんな話をこんこんとこの子にしても、多分少しも響きはしないだろうと思ったからだ。伏せ目がちな灰色の瞳は机に視線を落としたまま、倉木の話は聞き流している。
将来の選択肢を増やす。それができるのは、今ある程度余裕を持っている層だけだ。金銭面もそう。精神的なゆとりもそう。それにはどうしたって、家庭環境が大きく関わってしまう。

