この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第32章 雪

ーー見下してたんだろ? 汚いって思ってたんだろう?
ふいに宵の脳裏に、春加の言葉が蘇る。
おそらく自分に対してではなかったその問いかけは、桃華に向けたものだろう。取り乱した姿や悲愴な声は、いつもの春加とだいぶ様子が違っていて、宵の中で引っかかっていた。
「ーーなあ、晃。セックスって、そんな汚いかな?」
「え?」
意表を突いた質問だったのか、晃はわずかに首をかしげた。
宵は重ねて問う。
「大勢とセックスしたら、セックスした数だけ汚れるもんなの? その感覚、よくわかんなくてさ」
「……まあ、汚いか綺麗か聞かれたら綺麗ではないと思うけど。体を清潔にしてから始めたかどうかにもよるし、セックスそのものだけでなく、キスも細菌交換してるようなもんだしね。だからって、人数が多いからその分だけ汚れるってわけでもないと思う」
「いや、そーゆう話でもなくて……」
そりゃ、生き物同士がくっついて何かしらしてるのだから、綺麗ではないだろう。無菌室でもあるまいし。
「どういう意味での『汚い』かはわからないけど、物理的な意味じゃないなら『心』の問題かもね。ーー誰かに何か言われた?」
「いや……」
宵は首を振った。
ふいにキスされる。

