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Memory of Night 2
第32章 雪

助手席に宵を乗せるのは久しぶりだった。春加はいつも通り、アメリカの好きなロックバンドの曲を車内で流している。
バイトのたびに送り迎えをしていた頃も、用がなければ特に話はしなかったが、今日は春加から声をかけた。
「ーーおまえ、何企んでんの?」
「え、全然なんも」
「嘘つけ」
大雨の日ですら、カッパを着て自転車で帰っていた。送ろうかと声をかけても断られていたのに、今日は自分から送ってくれと言ってきたのだ、どう考えてもおかしい。
また桃華の話を振られるのかと思ったが、特にそんな様子もなかった。
春加は横目で宵の様子を窺い、とりあえずいつかのドライブの時のネタを引っ張り出してみることにした。
「……ラブホ、行く?」
「行かん」
シラけた顔で即座に一蹴される。
「……その気もないくせに、よく言う。マスターのことしか見えてねーくせに」
春加は驚いて、振り向いた。つい返す言葉に詰まってしまう。
亮との関係を取り繕おうか迷ったが、初めて宵の家に行った際、車の合鍵を忘れていってしまったことを思い出した。あの時点でただの上司部下の関係ではないことはバレてしまっているだろう。
諦めて前を向く。

