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Memory of Night 2
第32章 雪

「……俺、あんたのこと汚いとは思ってないよ」
「しつけーな、だからあれは……」
「ーー母さんも、あんたを見下したり汚いなんて思ってなかったよ、多分」
わずかにトーンを下げて、宵が言う。春加はどきりとした。
宵に桃華を無意識に重ねてしまっていたことや、そのせいで起きた苛立ちを宵自身にぶつけてしまったこと、気付かれているのだろうか。
「……あんたがまた機嫌悪くなりそうな話、していい?」
「……なんだよ」
「あのひでー二日酔いの日、あんたが店を飛び出していったあと、マスターが行ってた。昔一度だけ、母さんがローズを訪ねてきたことがあったって」
ーー降り続く雨の音が、耳の奥に蘇る。
気づけばドアの向こうに彼女がいた。桃華はスタッフ達の制止も聞かず、何度も春加の名を呼びながらフロアの中へと乗り込んできた。テーブルの下で今にも客の男根を咥えさせられる寸前だった春加は、必死にそこから抜け出した。
テーブルの前に、桃華がいた。呆然と立ちすくみ、春加を見下ろしていた。
「なんで……」
悲愴な表情と、声。
春加の服や髪は乱れていた。何をしようとしていたのかは一目瞭然だったはずだ。
「直接その場を見てたわけじゃねーから勘だけど、その時母さん……あんたをーー」
「ーー汚いに決まってんだろ……っ」

