この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第32章 雪

アパートの鍵は開いていた。宵が中に入ると、玄関の電気と共に廊下の奥の部屋の明かりがついていた。洗面所や風呂は暗いままなので、シャワーを浴びてはいないらしい。
メールはした。春加とドライブに行ってくる、という用件のみの文面を送っただけだったが、それに対しての返事もシンプルだった。わかった、という四文字のみ。
「……ただいま」
宵は部屋のドアを開けた。ソファーに晃の姿はない。部屋左手側にキッチンスペースがあるが、晃はそこにいた。
「あ、おかえり」
宵の姿に気付くと、晃は笑った。
「ごめん、出迎えもしないで。チキンライス炒めてたから、ドアの音に気付かなかったみたい」
「今日オムライス?」
「うん、卵の期限が切れそうだから」
言われてみると確かに、部屋に入った瞬間からケチャップのいい匂いがしていた。
「ーーハル姉と、ゆっくり話はできた?」
「うん」
宵は頷いた。ドライブはともかく、今日春加に送ってもらおうと思っていたことは、昨日のうちに晃に伝えていた。
特に晃は細かく詮索しては来なかった。前のように、彼女の車に乗ることを強く止められたりもしない。
それは自分を、信用してくれている証拠なのだろう。

