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Memory of Night 2
第32章 雪

「変なとこに連れていかれなかった?」
「うん、街の方少し走っただけだし」
「なら良かったけど」
「なんかイルミネーション見てきた」
「……デートコース?」
晃は卵五つを順にボウルに割り、そこにバターを入れて菜箸でかき混ぜた。その手際の良さについ見とれそうになる。
「でも、珍しいね。君がそこまで他人に興味を持つの」
「ーーほっといたら、ヤバイ気がして」
ぼそりと、宵は呟いた。上手く言語化するのは難しかったが、最近の春加は顔色が悪いことが多かった。少しやつれたような気もする。
奇抜なメイクのせいで、表情の変化もほとんど読み取れず、いつも彼女の心の内は見えない。何を考えているのかも、いつもよくわからなかった。それでも、あの日スタッフルームを飛び出していった彼女が投げつけてきた言葉だけは、本心からな気がしたのだ。
「……なんか、あの人見てると、自暴自棄になってた頃を思い出すんだよな」
志穂の手術費用を集めていた時は、どんな手段を使っても、金が欲しかった。ずっと志穂が入院したのは自分のせいだと思っていた。
自分さえいなかったら。同時に、体を崩す前に手放してくれたら良かったと志穂自身を責めたこともあった。

