この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第33章 撮影旅行前夜

そんな顔をされる謂れはない。
「夜遅いし、危ないよ、痴漢とかされたらどうするの?」
「……大丈夫だよ、女じゃねーし」
近所でそんな物騒な話は聞かないし、男が襲われる話もあまり聞かない。万が一襲われたとしても逃げるか返り討ちにしてやればいい。
だが晃は首を振る。
「やだ、俺も行く」
晃はシャワーの湯を弱め、口付けてきた。
もうお互い出しきっているため、興奮して襲ってくることはない。終わったあとの甘えるような晃からのキスは、宵も好きだった。
そのまま晃は宵の体を抱きしめてくる。
直接肌を触れあわせるのは心地よくて、宵も晃の腕に全身を預けた。
「一緒に行こう」
「……うん」
晃からの誘い文句は、少しだけ寂しげに響いた。
心配だから、という理由だけではないんだろうな、というのがなんとなくわかる。
ふと、思う。
晃とこんなふうに一緒にこのアパートで過ごせるのは、あと三ヶ月あるかないかだ。
晃はきっと、受験に合格するだろう。そうしたらここを出ていく。
尊敬する父親と同じ大学の医学部に行って、夢を叶えてきてほしい。そう思う気持ちは、宵の中に強くあった。そのために離れて暮らすことになるなら仕方がない。それもわかる。

