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Memory of Night 2
第33章 撮影旅行前夜

「好意があると思ったから、あの無茶苦茶な条件で働かせることを許可したんだけどね」
「……ていのいい厄介払いだったんだ」
春加は腑に落ちた気分で呟いた。
時給は破格の二千円、仕事はドリンクや簡単な料理を運ぶのみで、毎日春加自ら送り迎え、極めつけは年齢で、昔よりも夜の店の経営に関する法律が厳しくなった昨今、高校生を雇うこと事態が大きなリスクでしかない。
最初春加がほぼ独断で決めた宵を働かせる条件は、店にとって不利益すぎる。ずいぶんあっさり許可されたな、とは思っていたが、亮なりの意図があったらしい。
春加が好意を持つ子を店で働かせそれが上手くいけば、亮への気持ちが冷めると思ったのだろう。それを望まれていたというわけだ。
「残念だったな」
「別にそこまでは言ってないよ。真面目に仕事してくれてるし、客受けもいいし、彼のおかげで安くポスターの撮影もできるし、今は宵くんを店に連れてきてくれて感謝してる」
「そら良かった。あの顔なら、フロアに居るだけで客寄せになると思ったんだよ」
それは実際、本当のことだった。桃華によく似た華やかな容姿は、そこにあるだけで人を惹き付ける。土方ほどのめり込む客は稀だが、宵を気に入って通ってくれるようになった客は多い。

