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Memory of Night 2
第34章 衣装合わせ

アメリアはまず、宵のウィッグを手櫛で軽く整えた。そのまましばらく真剣な顔で、穴の空くほどじーっと顔を見つめられる。かなりの近距離で、無言で見られるのはさすがに居心地が悪かったが、嫌だと言える雰囲気でもない。
「ーーOK!」
何か、閃くものがあったらしい。突然そう叫ぶと、本格的なメイク道具を広げた。そこからは早かった。
見たこともないような道具で下地やファンデーションなど、いろいろな化学物質を顔に塗られていく。全体に広げられたものから徐々に狭まり、最終的には目元をいじられた。指示がない限りはほとんど目を閉じていたため何をされているのかよくわからなかったが、三十分もしないうちに顔面塗装は終了したらしく、アメリアの声が響いた。
「宵、デキタ、ヨ!」
宵は閉じていた目を開けた。
目前に立っていたアメリアが横に退(ど)き、鏡に自分の姿が映る。
彼女が施したメイクは、今まで晃や明にされた女装目的のメイクとは種類が違っていた。
「…………誰?」
「Snow monster!」
雪の化け物。そんなコンセプトだったと思い出す。確かに鏡の中の自分は、そのニュアンス通りの『何者か』だった。

