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Memory of Night 2
第6章 呼び出し
さすがに七回も来ていたら無視できない。
宵がかけ直すと、ワンコール鳴り終わらないうちに春加は出た。
「もしもーし」
「……もしもし。なんか、めっちゃ電話来てたけどどうかした?」
「今からバイト来れる? 今日シフト入ってる子達が三人休みなんだよ! もう全然店まわらん」
「え」
「これからなんか用あんの?」
「無いけど……」
宵はちらりと、晃を見た。
電話口、春加は状況を察したらしい。
「晃もいんの? ちょっとスピーカーにして」
言われるまま、晃にも声が届くようにする。
「急だけど、宵バイト出していい? 晃も来いよ。ただで飲み食いしてっていいから。もちろんノンアルもあるよ」
「え、晃も?」
「いいんですか?」
「悪いけど、今日は迎え行ってる余裕ないからタクシーで来い。タクシー代もあとで渡す。すぐ来いよ! じゃーまた」
「あ、ちょっ……」
ツー、ツーと無機質な機械音が、通話が切れたことを告げる。
「あいつ、一方的すぎだろ」
「歳上の人にあいつ呼ばわりはダメ。バイトになっちゃったね」
「マジでおまえも来んの?」
「俺が行っちゃ嫌なわけ?」
正直、嫌か嫌じゃないかと聞かれれば嫌に決まっている。晃にハプニングバーなんかに来てほしくないし、自分が働いている姿を見られたくもない。
「まあでもただで飲み食いしていいのは魅力的だなあ。一人でいてもつまらないし、宵が働いてる姿も見てみたいし、行こうかな」
「…………暇なら勉強でもしてろよ。タクシー呼ぶぞ」
そうして、二人は急遽ハプニングバーローズに向かうことになったのだった。