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Memory of Night 2
第36章 洞穴

宵は条件反射のように駆け出し、数歩先に立つアメリアの二の腕辺りを掴んだ。洞穴の外へと全力で走る。
言葉よりも先に、体が動いていた。
砂や、小さな土の塊は崩れ続ける。アメリアも異変に気付いたらしく、悲鳴をあげた。
洞穴を飛び出し数メートル、アメリアは勢いよく雪がまだ残る地面に膝をつき突っ伏しそうになる。
「あ、すみません……っ」
とっさに腕をきつく掴み、無理矢理走らせてしまった。いくらなんでも乱暴過ぎた。
ひとまず、洞穴さえ出れば安全なはずだ。
「大丈夫っすか? 怪我は……」
膝をついたままのアメリアに、宵も屈んで声をかけた瞬間だった。
ーー春加は?
もう一人の存在が頭をよぎる。すぐさま周囲を見渡すが、どこにもいない。
「……あいつは?」
「ハル……カ?」
アメリアも、弾かれたように顔をあげた。
洞穴で危険を感じ、とっさに目の前にいたアメリアを連れて出てきてしまったが、春加の動向までは気がまわらなかった。
まさかまだ、中で動けずにいるのでは。
宵は洞穴の入り口付近に走った。
「春加!」
精一杯の声量で名を呼ぶ。月明かりと懐中電灯に照らされ、ぼんやりとそれらしき人影が見えた。

