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Memory of Night 2
第36章 洞穴

ーー愕然とした。
雪の上に座り込んだまま、アメリアは放心したように目前の光景を見つめていた。
ほんの数分前まであった洞穴は、跡形もない。地鳴りのような轟音と土煙が徐々に晴れると、崩れた土砂だけがあった。入り口は岩と土で完全に塞がっていた。
たった今起こった全てが、にわかには信じられなかった。
ーーこれは悪夢か何かだろうか。
セーターの網目の隙間から入ってくる冷気と、雪の中についた手の身を切るような冷たさが、夢などではなく現実なんだと突き付けてくる。
「宵……春加……」
わななく唇で、ほんの一瞬前まで共に仕事をしていた仲間の名を呼ぶ。
洞穴の奥には春加によく似た人影があった。それを追って飛び込んでいった宵の後ろ姿もあった。
ーー確かにこの目で見た。
アメリアは這うようにして、埋もれてしまった洞穴まで行った。塞がった入り口の奥に二人がいるはずだが、無事なのかすらわからない。
名前を叫びながら、土や岩を指で掘り起こそうと試みる。湿った土は堅く、素手では全く歯が立たなかった。
心臓が早鐘をうつ。
ーー人を呼ばなければ。
パニックを起こしている頭で、ようやくそこにたどり着いた。

