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Memory of Night 2
第36章 洞穴

自分でなんとかできるような状況ではない。
どこにかけたらいい? レスキューは、日本じゃ何番だった?
目まぐるしく動く思考の渦。アメリアは汚れた手で全身をまさぐった。ズボンの横や後ろのポケット、上着の中や、白いセーターまで。
だが、スマホはどこにも無かった。
宵や春加に画像を見せ、緊急地震速報を聴いたあと、自分はスマホをどこにしまった?
雪の上の足跡を辿り地面を見ても、それらしきものはどこにもなかった。
洞穴から出る時に落としたのだろうか。芋づる式に気付く。スマホだけじゃない、ショルダーバックも中だった。撮影場所を決める際、乱雑に放り投げてしまったままだ。
その中には、ジープのキーもあった。
「……っ!」
アメリアは声にならない嗚咽を漏らした。
せめてスマホだけでもあれば。これでは助けを呼ぶこともできない。
酷い後悔がせりあがってきたが、嘆いてはいられない。
溢れてくる涙を拭い、アメリアは駆け出した。道中、民家などはなかった。屋敷まで走って戻り、直接助けを求めるしかない。
(二人トモ……待ッテテ……)
アメリアは二人の無事を祈りながら走った。雪の残る暗い夜道を転がるようにかけ降りていった。

