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Memory of Night 2
第37章 パンドラの箱

 中学一年の夏、千鶴に初めての彼氏ができた。孝明(たかあき)という同じくラスの男子生徒だった。千鶴は大きな垂れ目と茶色がかったくせっ毛で、桃華とは系統が違ったが女の子らしい容姿はそれなりに男の子達からモテていた。
 孝明は他の男子生徒よりも背が高く話が面白い。大人びた雰囲気に強く惹かれた。孝明から告白してくれた。本気で好きになったのは、付き合い始めて一ヶ月ほど経った頃からだ。
 初めて異性に芽生えた恋愛感情は、甘く、不安定で、中毒性も依存性も高かった。味の濃い添加物だらけの弁当のように、とても不健康な幸福ばかりあった。
 少女漫画のような甘酸っぱさなど幻想で、際限のない欲望はきりがなかった。
 それでも、彼のそばにいる時だけは、全てが満たされる。恋は不思議な感情だった。
 付き合って数ヵ月め、家に呼んだことがあった。親にも紹介すると、喜んで家にあげてくれた。その時、たまたま出先から帰ってきた桃華と廊下ですれ違った。千鶴は慌てて孝明のことを紹介した。
 千鶴自身の部屋に案内すると、開口一番孝明が口にしたのは桃華のことだった。

「……今の、ちづのお姉さん?」
「そうだけど?」
「すっごい綺麗な人だなー! 大学生? 結構トシ、離れて……」
「ーーねえ、どうでもよくない? 姉の話なんて」
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