この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第6章 呼び出し
「ーー決まった?」
ふいに聞き慣れた声が聞こえて振り向くと、宵がグラスをいくつも乗せたトレイを持って立っていた。
「これ、ノンアルだって。何味かわかんねーけど」
そう言って晃の前にグラスを一つ置く。琥珀色の液体が揺れていた。
宵はワイシャツにカマーベストというかっちりとした制服姿だ。男女兼用の制服のせいか、髪が伸びてきたからか、ボーイッシュな女性のようにも見える。
「ありがと。似合ってるね」
「どうも。で、食いもんは?」
「宵が食べたい」
頬に触れようと右手を伸ばすと、ぴしゃりとはね除けられた。冷ややかな眼差しで告げられる。
「お触り禁止なんで。ついでに本名もダメっぽいから、ここにいる時は翡翠って呼んで」
「源氏名まであるんだ。本当にキャバクラみたいだね」
晃が苦笑する。
「宵のオススメは?」
「あー、オムライスとか?」
「ならそれで」
「はいよ。ごゆっくり」
会話はあっさりとしたものだけで、宵は踵を返してカウンターの方へと歩いていく。
晃はどうしても、宵の周辺を気にせずにはいられなかった。