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Memory of Night 2
第38章 救援

まだ笑っている。
一瞬だけ浮かんだ彼女の面影を、千鶴は振り払った。
それから、ずっと疑問に思っていたことを聞いた。
「……おまえさ、今の状況で、なんでそんなヘラヘラ笑ってられんの?」
この穴で目覚めた時からそうだった。宵は妙に冷静で、平気で洞穴を出てからのことを口にする。
千鶴の意識がない時から、自分やアメリアの荷物を漁り、自力で出るために壁に穴を開けようとしていたならわかるはずだ。それがどれほど無謀なことか。自分たちにはどうにもできない現実を、突き付けられたはずだ。
どうにもならないと諦めたから、今隣に座って昔話なんかさせられているんじゃないのか。
そんな状況でなぜ、脱出できたあとの話を平気で口にできるのか。笑って冗談が言えるのか。
「焦ったってしょうがねーじゃん。待ってりゃそのうち助けが来るだろ」
「……こんな山奥じゃ、いつになるかわかんないだろ。きたところで、車で入ってこれない急な斜面を登らなきゃ辿り着けない場所だ。結局人力で掘り起っていくしかない状況で、何時間かかるかわからない」
それほど時間がないことくらい、この少年にも理解できているだろう。
どうにもできないまま、酸欠で死んでいく少し先の未来が容易く想像できた。

