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Memory of Night 2
第39章 幸福の形

夜中、千鶴のところに顔を出した日、桃華は出ていった。戻らないまま一週間が過ぎた。
最初両親は驚いていたが、無理に連れ戻そうとはしなかった。とっくに成人している。好きにさせておけと、父親は言った。
「まったく、あの子もわがままに育ったものね。美しく産まれて何が不満なの。好意を寄せてくれる男性も多いのに、選り好みばかりしてたらいつか貰い手なんて居なくなってしまうじゃないの」
やれやれと母も言う。
「まったくだ。仕事もそうだぞ。工場を継ぎたいって行ったかと思えば出ていっちまうし、やりたい放題じゃないか。結婚も嫌、女も嫌、無い物ねだりばかりだ」
父も母と同じように、愚痴をこぼしていた。
違う、と千鶴は思った。
姉はもともと工場で働きたかったわけじゃない。長女だから、そうしていただけだ。男の兄弟がいれば、もっと自由に生きていただろう。
結婚もそうだ。選り好みをして言い寄ってくる子を振っていたわけじゃない。痴漢にあったのが直接的な原因かはわからないが、ただ単に男そのものに苦手意識が強かっただけだ。
あまりにも両親は桃華を理解していない。まだ自分の方が彼女の気持ちをわかっていたのではないかと、千鶴はその時初めて思った。

