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Memory of Night 2
第6章 呼び出し
そこに居たのは宵だった。右手にオムライスを乗せ、テーブルの前で待っていた。
「あら翡翠ちゃん。声をかけてくれればいいのに」
「お話中でしたので」
宵は女性に会釈し、晃の前にオムライスを置いた。デミグラスソースとふわふわ卵のオムライスはとても美味しそうだった。
「冷めないうちにどうぞ。じゃあ、またイベントで」
女性は優雅に立ち上がり、去っていく。
断るタイミングを逃してしまった。
「あの女性はこのバーの常連さん?」
「……さあ。たまに見かけるけど、いろいろスゲーよな。服の意味あんのかなって思う」
「いろいろな人がいるんだね」
名前すら名乗らなかったし、聞かれもしなかった。そんなものは、たいして重要じゃないのかもしれない、ここに来る人たちにとっては。あくまで自分の趣味をさらけ出し、気の合うパートナーを探せればいいのだ。
「良かったな、ご指名じゃん。8時からだって、イベント。楽しんで帰れよ」
宵の声は冷ややかだった。
「……ちょっと嫉妬してる?」
「別に」
「さっきの女性見ながら、ずっと宵のこと考えてたよ。宵もああいうエッチな格好してくれないかなって」
「……するわけねーだろばーか。あと本名禁止だって」
呆れたように言う宵。
晃は少し笑ってから、肝心な質問をした。これだけは聞いておかなければ。
「ところで、イベントって何するの? 俺なんにも聞いてないまま指名されちゃったんだけど」
「マジ? ……おまえが好きそうなことだったよ」
「ええ?」
ますます気になる。
宵は一瞬押し黙り、さっき女性が歩いていった方角を気にしながら、言った。
「ーー緊縛の講師を招いての、実演会、だって」