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Memory of Night 2
第39章 幸福の形

「あの日から、桃華のことを思い出すと頭痛や吐き気が止まらなくなる。酒もタバコもギャンブルも、全部あの頃始めた。自分が犯されたことも桃華が結婚して子供を作っていたことも、あの日のことを忘れたくて必死だった。入り込む隙間もないくらい、何かに依存したくてたまらなかった。もう男以外の何かがいい。……タバコと酒が、抜群に効果的だった」
千鶴は自嘲気味に笑った。
「ーーはい、あたしの話はおしまい。あたしと桃華の昔話はお楽しみいただけた? いい冥土の土産話になったかよ?」
「……」
宵は何も答えなかった。驚いてほしいわけでも慰めてほしいわけでも、ましてや同情してほしいわけでもない。
くそみたいな話を誰かに話したのは初めてだった。
桃華への気持ちは亮にすら、ずっと打ち明けられずにいたのだ。
あの日のことも言っていない。ただ、あの日を境に自分への接し方が変わったような気がする。一定の距離を取るようになった。それでも、何も言ってはこなかった。
三日間店を休んだ。四日目から如月春加という人物になりきり、復帰した。千鶴はあの日死んだのだ。生まれ変わることができなくても、せめてあそこでは、別の自分で居たかった。

