この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第39章 幸福の形
それだけだった。別に責めも怒りもしない。その態度になぜかむかついた。
怒らせてやりたいのか、それとも傷つけてやりたいのか、もうどれが本当の感情なのかもわからなかった。
「誰もあたしを責めやしない。最初、そう言ったよな?」
「……言ったかもしんねーけど、それが何? 今の話なら別に」
「違う」
きっとこれが、本当は一番吐き出したかった内容なのかもしれない。
宵をずっと見れなかったのは、桃華を思い出すからだけじゃない。
「酔っ払って酷い二日酔いで寝ていた日、役所から二人組の男が来たんだ」
くたびれたスーツ姿で、玄関に立っていた。
「おまえの両親が死んだこと、初めて聞いた」
宵は千鶴を見ていた。今までと同じように、真剣な顔をして。
「二人のうちの一人が言った。『子供を引き取ってください』と。『あなたにはその権利がある』と。ーーおまえを引き取って育てるのは、本当はあたしだった。だけどあたしはそれを拒んだんだ。施設に行くかもしれないのをわかってて」
酷い罪悪感で、しばらくものが食べられなかった。胃に入れるたびに全部吐き出してしまう。
だから言えなかった。桃華との関係を、バラしたくなかった。
必然、そこに辿り着いてしまうから。
「ーーあの日あたしは、おまえを捨てたんだよ」