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Memory of Night 2
第7章 緊縛イベント
緊縛イベントは八時ちょうどに開始されるらしい。あらかじめスタッフがテーブルやソファを何台か片付け、フロアの中央に五人ほど入れるようなスペースを作っていた。
「二分前に照明消すから、そうしたらあの空いてるスペースの真ん中に行って」
急いでベストを脱いで戻ると、春加にそう耳打ちされる。
「……真っ暗になんの?」
「いや、小さい照明はつくよ。ちょっとした演出だから気にしなくていい。緊縛の手本として最初に講師がおまえを縛ってから、他の客も体験する流れで進行してくんで、よろしく」
「手本て……」
「あ、時給以外にちょっと報酬も出すから、よろしく」
もう何をよろしくされてるのかもよくわからないまま、いよいよ照明が消えた。ざわざわと、客達の囁きが聞こえ始める。宵は指示通り、広いスペースの真ん中に立った。
「やあ、宵くん。今日はありがとう。僕の相手を引き受けてくれて嬉しいよ」
不意に腰に手をまわされたかと思うと、耳元でそう囁かれる。その声は、聞き覚えがありすぎるものだった。
「あなた……だったんですね、緊縛の講師って。突然のご指名だったので驚きました」
「……直接誘っても、あしらわれてしまうからね」
苦笑混じりに、そう土方(ひじかた)は言った。