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Memory of Night 2
第40章 罪
宵は呆れた顔になる。
それから少しためらいぎみに、言った。
「つか俺、あんたと暮らすのぶっちゃけ無理だわ。酒ばっか飲んでそうだし、家ん中とか一人暮らししてた頃の俺よりやばそうだし、その横暴な性格に四六時中付き合わされんのも勘弁。たぶんあんたに引き取られたらストレスでグレてたかも」
「……本当に生意気なやつ」
「今の距離感がちょうどいいんだよ。ーーだから別に、あんたを責めない」
その言葉は、例えるなら暗闇から射す一筋の光のようだった。
千鶴は笑った。
無理矢理過去を話させられて、こんなに救われた気持ちになるとは思わなかった。
「ありがとう」
あまりに素直な礼だったせいか、宵は心底驚いた顔で千鶴を見つめた。
やがて、一言。
「礼替わりに、一ヶ所付き合えよ」
「……一ヶ所?」
「……母さんと親父の墓参り。ちょっと遠いんだよね。あんたの車で行く」
千鶴はぼんやりと上を見上げた。
「ーー墓参り、一回も行ったことなかったわ。いいよ、ここを出れたらーー」
そこまで話した瞬間だった。
クラリと、視界が急激に真っ暗になっていく。
痛みはあまり感じなくなったと思ったのに、なぜだろう。ふわりと体が浮くような錯覚を覚えた。
「おい! しっかり……ーーか……をーー」
急速に遠のいていく意識の中で、千鶴は寒さと、息苦しさと、頬に触れるやけに熱い体温を感じていた。