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Memory of Night 2
第41章 タイムリミット

土を掘るための道具は、地面に転がっていた石のみだった。スコップなどのちゃんとした道具があればもっとスムーズに進んだかもしれないが、本来の目的は洞穴の下見なのだ。そんなもの用意してくるわけがない。
代用品として使えそうなものもなかった。
宵がいろいろ試してみた結果、手のひらにちょうどおさまるサイズのものが一番掘りやすい気がした。だが、それでもたかが知れている。
左足を怪我しているためあまり踏ん張ることもできず、思うように力が入らない。おまけに石はごつごつしていて、何度も土壁に叩きつけていると、手のひらを傷つけていく。スマホのライトで照らしてみると、すでに何ヵ所か皮が向け、血も出ていた。右手の中指と人差し指の爪先も割れている。
細かい傷も痛みはしたが、ずっと強く石を握り続けていたせいか、指全体の関節が鈍い痛みを伴っていた。しっかりと手を開くことすらできなくなっていることに、そこで初めて気が付いた。
宵はしばらくスマホを閉じ、上着のポケットに入れていた。時間の経過を知るのが怖くもあったし、充電の消費を抑えたいのもあったからだ。目前の壁をただ掘っていくだけなら、光は必要ない。手で感触を確かめながら、機械的に腕を振り下ろすだけでいい。
再びスマホをポケットにしまい、ざくり、と土壁を掘った時。
「……っ」
砂か何かが舞い、突然左目が痛んだ。宵は顔を振り、左手で目を強くこすった。目に何か入ったのだろう。
どうせ暗闇なのだから、目を閉じていても一緒だ。きつく閉じ、粉塵から守るように口や鼻も上着で覆った。

