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Memory of Night 2
第41章 タイムリミット

「すぐに助けるから! 壁からもっと離れられる? 土方さんがユンボでぶち破るって」
やはり先ほどの音と衝撃は、重機らしい。
宵は左足を引きずり、ふらふらと千鶴の隣まで行き腰を下ろした。千鶴が横たわっているのは、反対側の壁際だ。数メートルは離れられる。
宵は左手で千鶴の首に触れた。
素肌は温かく、ちゃんと体温があった。脈の音も聞こえる。
良かった、まだ生きている。宵は安堵し、口元に笑みを浮かべた。
やがて激しい音と衝撃が、再び響いた。千鶴の体にかけていたウインドブレーカーを手直しし、頭まですっぽりと覆った。万が一大きな石が飛んできても頭を守れるように。何度か繰り返され、目前に立ちはだかっていた土壁がようやく崩れた。
暗闇が割れ、冷たい風が流れ込んできた。
重機と、たくさんの人影。月明かりの中舞う白い雪。ーー外はこんなに美しい世界だったっけ、と思う。
「宵……!」
真っ先に駆け寄ってきたのは晃だった。抱きしめられた瞬間、助かったのだと実感できた。どうしてか、抱きしめ返そうにも指一本動かせなかった。
最後に何を伝えたのか、宵にはよくわかっていなかった。自分よりも重傷な千鶴を、一刻も早くここから出してやりたかった。それを言葉にしたような気もする。
宵はそのまま眠るように、晃の胸の中で意識を手放したーー。

