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Memory of Night 2
第42章 入院生活

そのあとすぐに晃は部屋を出ていき、下の売店で下着などの着替えを買ってきてくれた。暇を持て余さないようにと、テレビに差し込めるイヤホンや甘くない煎餅などの菓子も。荷物も、余分なものは抜き、帰るとき用の服だけ置いていった。看護師によると、救急車で搬送されたあと、宵のバックを病院に届けてくれたのは晃らしい。貴重品は、入院の時にすでに別にまとめて渡されている。
なんてマメなのか。もはや恋人というよりオカンのようである。
そうして軽い挨拶と共に、晃は病室をあとにした。駅に直接向かい、ローズの人たちと新幹線に乗るという。
晃が家に帰り、ほんの少しの期間でも勉強に専念できたらいい。
宵自身は受験は諦めていた。利き手が使えないのは厳しい。手術になる可能性だってあるし、たとえならなくても、リハビリに二ヶ月ほどかかるだろうと言われた。
どうしても進学したいわけではないし、晃のように明確な夢や目標があるわけでもない。別にいいかな、と思っていた。
そして、夜。病院の消灯時間は早い。だが宵は、鐘の音で目を覚ました。
(除夜の鐘って、病院でも聴こえるんだな)
どこの寺からのものなのかはまったくわからないが、鐘の音(ね)は不思議と心地よかった。
まさか、病院で年越しするはめになるとは思いもよらなかったが。
ベッドを下りカーテンを開けると、澄んだ夜空に月が浮かび、綺麗だった。
総合病院の三階。地元からは遠く離れた雪に彩られた町は、自分が見てきた風景とは違っている。宵はしばらく窓から外を眺めていた。

