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Memory of Night 2
第43章 受験の女神様

どれくらい時間が経過したのか。隣に置いたスマートフォンのバイブ音で宵は目を覚ました。
また、晃からだろうか。地元に一足先に帰ってから、頻繁に連絡がくる。宵の体調を気遣う文面と、光熱費などの支払い関係の事務的な連絡が主(おも)で、毎日メールが数通、電話も一、二回。そのせいか、物理的に離れた場所にいるという実感があまりなかった。
晃は今、自分の家に帰っている。千鶴が四人部屋に移ってくる前日に、その旨の連絡があった。部屋は片付けて、冷蔵庫の中も腐らないよう綺麗にし、借りていた自転車も持って帰るという。
宵も、その方がいいだろうと思っていた。宵自身いつ帰れるかの目処が立たない。一人であの部屋にいるより、両親のもとに帰った方がいい。進学で上京すれば、多くても月に数回程度しかこちらに帰ってこれなくなるだろう。必然、家族と一緒に過ごす時間はかなり減ってしまう。
宵がいる時は、晃はなかなか家に帰ろうとしなかった。自分との時間を優先させてくれるのは嬉しくもあるが、もっと家族との時間を大切にしてほしい、とも思う。今の状況はある意味では、いい機会かもしれない。
その流れの中で察してくれたようで詳しく聞かれはしなかったが、自分が受験できないかもしれないことも伝えた。

