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Memory of Night 2
第2章 秘密のアルバイト

「ああ、初めてであんなのを見せられたら怖いかな。そうだ、僕が縛ってあげるよ。大丈夫、痛くなんてしないから、ゆっくりゆっくりこっちの世界に慣れてけばいいんだよ……」
中年の男は店員の右手を掴んだまま、もう片方の手を店員の頬に持っていった。
「申し訳ありませんが、スタッフに手を出すのはルール違反です。出禁にさせていただきますよ?」
その時、女性の声が響いた。別の店員が横から中年男の手を掴み、絡まれていた店員から離させていた。
「は、春加(はるか)ちゃんっ」
男は慌てたように身を引く。
春加は古くからいるスタッフで、常連であれば知らない者はない。彼女を怒らせると店にはいられない。
「じょ、冗談だって。そのお嬢ちゃん新入りだっていうからさ、初々しいなと思ってちょっとからかっただけだよ。ーーね、お嬢ちゃん」
助けを求めるように、灰色の瞳の店員を見る。
先ほどまでほとんど表情の変わらなかった口元が、不意に緩んだ。
「ええ、お客様のご趣味についてお聞きしていただけです。あと、俺はお嬢ちゃんではないです。男なんで」
「ええっ?」
言われてみるとその店員は一般的な女性よりも身長が高めだった。胸や尻など、体躯に丸みもあまりない。低めの声も、男と言われて違和感はなかった。
「そうか……。いろいろとすまなかった。ちなみに名前は?」
「宵(よい)です」
「素敵な名前だ。また会いにくるよ」
そう言い、男は宵の右手を、今度は両手でがっしりと握った。

