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Memory of Night 2
第45章 卒業

本音のつもりだったが、あとから来た方の少年は、鬱陶しそうに倉木を睨んでくるだけだった。
隣の少年も、肩を震わせて笑いを堪えていた。
「好評じゃん。アドリブ入れて良かったな」
「どうも」
そんなやり取りすら可愛らしいと思えてしまうから不思議だ。
しかし体育館では拍手が起きていたのも事実だ。それだけあの答辞が生徒たちの心に響いたということだろう。
倉木は少年たちの顔を交互に見やった。
「ーー君たちが居なくなると、南風高校もだいぶ華が無くなるねぇ」
ロッカーに寄りかかり、腕を組む。
意識せずとも、どこかしんみりとした口調になってしまったことに気付きはっとする。
それを吹き飛ばすように、倉木は努めて明るく行った。
「ーー宵くん、晃くん、改めて大学合格おめでとう! 二人とも頑張りすぎず、適度に遊びなさいよ」
「はーい」
声が揃う。
「ーーお世話になりました」
静まり返った教室に、声が響く。倉木は胸が詰まりそうになった。
旅立っていくのだ。必要なのは涙ではなく、祝福だ。
「こちらこそ、楽しい日々をありがとう」
倉木や生徒が一年間過ごしてきた教室を、夕日が鮮やかに照らし出していたーー。

