この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night 2
第45章 卒業

その声と共に、別のクラスの少年も現れる。
「……あれ。おまえの担任に挨拶しに職員室に行ったんじゃねーの?」
「もう終わったよ」
「あら、二人で来てたの? 君のことも聞いてるよ。東京の医大に受かったそうね。おめでとう」
「……ありがとうございます」
だがもう一人の少年は、不機嫌そうに茶色い瞳を細めていた。
それから倉木に向かい、艶やかだけれど冷ややかな笑みを浮かべ、耳もとで囁いた。
「ちなみに未成年に手を出すのも普通に犯罪ですよ。もう卒業しましたし、後腐れなく教育委員会にチクれますね」
「…………君、やっぱ本性腹黒いよね。というかまるで番犬みたいだね」
倉木はひやりとした気持ちを隠し、もう一人の少年にもにっこりと笑った。
彼が言っているのは、彼らが二年だった時の保健室での出来事だろう。せがまれるまま行為に及び、望むまま金銭を渡した過去は確かにあった。
振り返ってみれば、あれはいろいろとまずかった。
だが嫉妬剥き出しの少年の態度は、少し可愛く見えた。
入学当初から生徒達の注目を集めていた二人が、実は恋愛関係にあったこと、ついこの前の共通試験の日に知った。
「あ、卒業式の答辞、とっても良かったよ。いい笑顔だったねえ」
「…………」

