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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 正式に採用になり、まず秋広は電話でそれを伝えた。制服を注文するためサイズも確認したが、Sで大丈夫だろう。注文した制服が届く頃、契約書を書いたり仕事に関して一通り説明するため、香椎桃華を再び事務所に呼んだのだった。その日は藤巻社長自ら立ち会って、彼女と話をした。
 腕力は並みよりあったが、建築の仕事経験があるわけではないらしく、一から教わることになる。その間は仕様期間になるということも社長自ら伝えた。

「仕様期間をすぎれば、求人に載っていた通りの給料になりますか?」

 桃華は契約書に目を遠し藤巻に尋ねる。

「もちろんだよ」

 藤巻はにっこりと笑った。
 それから履歴書を眺め、改めて尋ねる。

「……ここを受ける前は、飲食店で働いていたんだね。失礼だが、三ヶ月で辞めているね。何かあったのかい?」
「…………」

 桃華は黙っていた。

「失敬。これは面接ではないからね。理由を聞いたからと言って、今さら香椎さんを不採用にしたりはしない。あくまで、香椎さんが働きやすい場所を作っていきたい気持ちがあるからだ」
「手を……」

 桃華はそう言いかける。

「……出されそうになったのかい?」
(ええ!?)

 黙ってしまった桃華に、藤巻はそっと問いかける。
 秋広は内心驚いていた。
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