この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 あれ、と思う。自分の声のトーンが低い。秋広は無意識にコーヒーゼリーが入っていたコップを見つめた。
 桃華が作ってくれたもの。手作りのゼリー。秋広はそれがとても嬉しかった。
 こうして部屋に入れてくれて、自分が作った料理を食べてくれる。二人きりで。
 ーーこの関係は、『特別』なものではないのだろうか。

「『女の幸せは嫁に行くこと』。そういう考えの人だったからな、両親とも。それが何より窮屈だった。……工場継ぐって言っても女のあたしには無理だって言われて、やってられっか、と思ってそのまま家を飛び出して、今。もうずっと連絡も取ってない」
「ええ!? じゃあ、ご家族は桃華さんの今の住所知らないんですか?」
「知らないんじゃない? ……妹にだけは伝えたかったけど、家に電話かけるのは嫌だし。……本当は呼びたいんだけどね。こんなボロいアパートじゃどのみち呼べねーか」

 最後のセリフは独り言のようだった。
 秋広は部屋を見まわす。確かに、お世辞にも綺麗とは言えなかった。

「…………」

 上手いフォローも思いつかず、秋広は返す言葉を探す。見つからず、沈黙が流れた。

「あたしはこんなだったけど、妹はそんなことない。ちゃんと年頃の男と恋愛して、両親とも学校の友人達とも上手くやれてたはずだ。あたしよりずっと人間らしく生きてる。……可愛い妹だよ」

 頬杖を付き、写真の中の少女を眺めながら桃華は笑みを浮かべる。柔らかく細められた瞳には、慈愛と共にどこか憂いのようなものが感じられた。
 そんな表情を美しいと感じてしまう自分は、どこかおかしいだろうか。

「妹さんの名前、なんて言うんですか?」

 桃華は写真たてを眺めたまま、言った。

「ーー千鶴(ちづる)」
/991ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ