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玉蘭花の香り
第1章 婚約
自分にとっては、数回目の台湾旅行だったが、
優子さんは初めてだったので、
台北市内の定番の処を廻り、
グルメを楽しみ、
台湾シャンプーや、エステに足裏マッサージに行こうとあれこれ計画した。


せっかく結婚前の独身最後の女子旅だからということで、
少し贅沢に、オークラに泊まることにした。


郊外の九份や基隆、猫空にも足を伸ばした。
有名店で飲茶をしたり、
夜市で屋台グルメも楽しんだ。

女友達との旅行は気楽だし、
周りから親切にもされるので、
快適に過ごせた。

五つ星ホテルの中にあるエステにも行ったら、
「系列店で少しリーズナブルな足裏マッサージの店舗を新しくオープンします」と、クーポン付きのショップカードを貰った。


最後の夜に、そのリーズナブルな足裏マッサージに行ってみることにした。



その店は、店内も新しくて、良くある外から見える所にズラリと足裏マッサージの椅子が並んでいるような店舗ではなかった。


入ってすぐのスペースは、
古いアンティークのような中国の重厚な家具が置かれていて、
1本の欅か何かから切り出して作られたような茶盤がそのままテーブルになったようなものも置かれていた。


中国茶が大好きな私は、

「これ…素晴らしいわ!」と思わず呟くと、

「お気に召しましたか?」と中国語で言いながら年配の上品な男性が奥から出てきた。


片言の中国語で、
「こんな素晴らしいものは見たこともありません」と答えると、

「日本の方ですか?」と日本語で訊かれた。


わざと、台湾語で、
「はい。私は日本人です」というと、
嬉しそうに「台湾語も喋れるのですか」と笑った。


「少しだけです」と更に言うと、

「良かったらお座りください」と言いながら、
奥に声を掛けた。


奥から長身のハンサムな若い男が出てきた。


「息子は日本語が出来るから」と言って、
「ごゆっくり」と笑うと奥に入ってしまった。


優子さんと顔を見合わせると、
「どうしよう?」と小さい声で言った。


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