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親友のカレ
第1章  親友のカレ
 


「今日は本当にありがとね、凛。元気そうで安心した!」

『私も、久しぶりに会えて嬉しかった。ありがと』


ファミレスを出た後、別れ際にギュッと抱き着いてきた真奈を両手でいっぱいに抱き締め返す。


「また、ご飯行こうね!」

『うん、楽しみにしてる。またね』


そして、私から離れた真奈は隣に居た彼と手を繋ぎ、楽しそうに笑いながら駅の方へと歩いて行った。


『…よかった』


高校の時、付き合っていた彼に浮気をされてから、恋愛に対して酷く塞ぎ込んでいた真奈。

もう二度と彼氏なんていらないと言っていた彼女が選んだ"彼"なら、きっと悪い人ではないと信じたい。

そんな事を考えながら、帰路に着いた私は 道の両端に並んでいる街灯を見上げながらホッと溜め息をついた。


『明日は午後から会議だったっけ…』


真奈に比べて私は 今日までの生まれて20年間、これといった恋すらした事がない。

学生の頃、カッコいいなと目を惹かれた先輩はいたけれど、そういう人には大体、可愛らしい彼女がいた。

同じクラスの男子に告白された時は"お試しでいいから"と付き合う事になったものの、好きという感情が分からず、良い返事が出来ないまま、自然消滅した。

社会人になってからも、仕事に集中していて恋愛をする余裕なんてなかったけれど…。

幸せそうな真奈を見ていると 正直、羨ましいなと感じた。


いつか、私も夢中になれるような恋をしてみたい──。

そう思いながら、突き当たりの角を曲がろうとした、その時だった。



「まだ、こんなとこに居たんだ?」


背後から声を掛けられ 振り返ると、そこには 真奈と一緒に帰ったはずの彼の姿が。


 
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