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フレックスタイム
第9章 天使降臨
新年度になって、ケンは年中さんになった。
そろそろ、小学校受験について考えなければいけない時期だった。

私立や国公立大学の附属にする方向で、
通学時間やその後の進路などを翔吾さんと相談して、
いくつか候補を挙げたりしていた。
父の教えている大学の附属も候補の一つではあったけど、
今すぐ決めなくても、
もう少し調べてみることになった。


仕事は順調だった。
8月には産休に入る予定だったので、
新しく秘書室に入るメンバーを、
男性と女性1人ずつ選んで配属させて、
引き継ぎなどもしていた。


池田さんも変わらず、
仕事は続けてくれていて、
むしろ、秘書室に常に居て目を配ってくれる点が安心だった。


梅雨の時期になると、
1年前の事件のことを思い出すような天候で、
手の傷が疼くことも多かったけど、
翔吾さん以上にケンの方が、
大きくなってきたお腹に話し掛けてくれたりするので、
安心してマタニティ生活を送ることが出来た。


産休に入るタイミングで、
部屋の模様替えもすることになった。

帝王切開の手術の後、階段の上り下りが大変だということで、
1階の客間を私の寝室にすることになった。
ところが、翔吾さんもケンも、
同じ部屋が良いと言ってきかないので、
親子全員で使える寝室にすることになった。


「でも、夜泣きの時はお仕事に差し障るから、
2階で寝てくださいね?」と言ってみたけど、
翔吾さんは全く取り合ってくれなかった。


予定日の1週間前が出産の日になっていた。
とにかく、破水したりしないように、
最後の1ヶ月はとても慎重に過ごすように言われていた。


入院の日は、
定年退職後、家の専属運転手になってくれた阿部さんの車で、
翔吾さんと病院に向かった。


病室は個室だったので、
ひとまず荷物を置いて、検診と説明を受けた。
その日は、翔吾さんも病室に泊まってくれたけど、
翌朝の手術の朝、
「心配して眠れなくて、
朝まで私の顔を見ていた」と赤い目をして言った。

「まあ。
大丈夫ですよ?
あっという間にに終わりますから。
性別、聞かなかったから、
楽しみですね?」と笑ってキスをした。

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