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フレックスタイム
第11章 フレックスタイム
外のテラスの大きなテーブルにクロスを掛けて、
サンドイッチや焼き菓子、紅茶を運びながら

「ケン、ダディに声を掛けてから、
グランマと古川さん、呼んできてくれる?」と言うと、
レンと手を繋いで、ゆっくり奥の部屋に向かってくれる。


庭のお花を摘んで、テーブルの真ん中に飾る。


賑やかに家族が集まってくる。
お母様がレンを抱っこしてくれるので、
私は古川さんとサンドイッチや紅茶をサーブ出来る。


「ねえ?
もう1人くらい、赤ちゃん増えても、
わたくし、全然抱っこ出来るわよ」とお母様が笑うのは、
なんだか、予言のように聴こえて、
思わず翔吾さんの顔を見てしまう。


「欲しいけど、
授かり物だからね?」と、
翔吾さんが顎の下を掻くと、

「妹が良いな。
でも、弟でも良いよ?」とケンまで言う。


「でもさ、百合、今度の人事で、
役員になると思うよ?」


「えっ?
そうなの?」


「業績の伸び。
官公庁からの助成金の獲得。、
社員の定着率。
マスコミ対策。
会社のイメージ戦略。
どれとっても、ならない要素はないよ?」


「でも私…
フレックスタイムの勤務よ?
赤ちゃん出来たら、
更に産休育休…」


「それも良いんじゃない?
役員自ら、
会社の制度と規約の通りに休めたり、
時短やフレックスタイムの勤務して、
数字を取れるなら、
社員もそれに続くでしょ?
なんなら、社長になっても良いんじゃない?」


「あら。
そんなの嫌よ?
私は、翔吾さんの秘書が良いんですから」


「秘書って何?」とケンが訊く。


翔吾さんは、
「秘書は、マミーってことだよ?
俺のことを一番判ってくれて、
お仕事しやすいように、
こっそり色々なことをしてくれる天使だな」


「マミー、凄いね。
天使なんだ」


「背中に羽根がついてて、
時々飛んでるかもよ?」


「やだ。
翔吾さん!
羽根なんかついてないですよ?」


ケンが立ち上がって、
そっと私の背中を撫でると、

「羽根、ここに折り畳んであるんでしょ?」と、
肩甲骨の処を触りながら言った。


「なんか、コリコリしてるもん」と真剣な顔で言うから、
みんなで笑ってしまった。
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