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フレックスタイム
第1章 午前7時の女
取り敢えず、化粧室に入り、
化粧直しをしながらお喋りする女子を横目に、
文字通り用を足して、手を洗い、
マスクを外してジョンマスターズのリップクリームを塗った。


華やかな良い匂いのする女子と違って、
鏡に映る私はなんとも地味で目立たない女だった。

多分、彼女達は、私の名前も知らないだろう。
それを考えると、
今朝、私に名前で呼び掛けた社長には驚かされた。
しかも、フルネームで認識していた。


薄い眉を補う為だけに少し描き足しただけの眉毛に、
リップクリーム。
ファンデーションすら塗ってないけど、
唇の色が元々明るいので、
多分ノーメイクだということには誰も気づいていない。

しかも黒縁の眼鏡とマスクもしている。
マスクは自宅以外、外すことは殆どない。

服装は、天然素材のゆったりした黒か紺のワンピースにニューバランスのスニーカー。
背も高くはない。
胸はボリュームあるけど、スタイルも普通だ。
これに黒いリュックを担げばいつもの通勤スタイルになる。


シャンプー類だけは拘っているし、
アロマオイルは好きだけど、
香水のような過度な香りを纏うのも苦手だった。


とにかく、目立たないこと。
これだけが重要だった。


少しお化粧をするだけで、
くっきりと派手な顔立ちに見えてしまうせいで、
若い頃は良く男の子達に追い回された。

電車通学をした大学時代は、
ラッシュの電車で痴漢に遭うこともしばしばだった。

そして、あの事件の後は…
マスコミに追われて、
実家にも帰れず、
目立たないオートロックのマンションを探して、
ほぼ身体一つで引越しした。

今も荷物は殆どない質素な部屋。
唯一、立派な桐箪笥だけが目立っている。
実家の母と亡くなった祖母が見立てて誂えてくれた着物達。
でも、ずっと続けていた茶道と華道のお稽古もあれ以来行けないままだった。


ここの会社は、私にとってはオアシスで、
シェルターのようなものだった。

誰も私のことは知らない。
フレックスタイム勤務なので、
ラッシュの電車やバスに乗ることもない。
同じセクションの同僚としか話もしない。


以前は尾行されていないかとビクビクと後ろを見たりしてたけど、
それもしなくなっていた。

急に涙が溢れたり、
震えたりすることも少なくなった。


時間は確かに、
心を癒やしてくれているのかもしれない。
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