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そぶりをやめて
第17章 190日
やっと2人でいちゃいちゃ出来る。

アイスを食べながら近づいて、汐里の体を抱きしめようかと思った瞬間、汐里が立ち上がる。

「さ!仕事しよ〜!」
「え?仕事??」

ワザとではないと思うが、するりとかわされた。
伸ばしかけた手が宙ぶらりんで、ゆっくり頭のあたりまで伸ばして、そのあたりを掻くふりをする。

「っそ!明日までに、ってやつがあるのよ」

何するかさっぱり分からないが、今から?

「もうほぼほぼ出来てんだけどね。なーちゃんたちも、ほら、今日までキャンプでしょ。もう帰っただろうから、確認しないと」

なにやら説明しながら、空になったアイスのカップと、スプーン2本を洗って片付け、パソコンを取り出している。

義理の兄家族が、佳佑と汐里がグランピングしたのを羨ましがって、同じとこを予約したと少し前に聞いた。
それが昨日今日だったんだ。

それで、この金曜日からの3日ほど、暇にしてたんだ。
いつもなら、電話で打ち合わせしまくってるし。
現地の店舗に、入り浸っていてもおかしくない。

「...佳佑?」
「ん?あ、いや...」

確かに、明日から仕事だし。
切り替えて、いつものルーティンに戻していかないと。

「ゲームしよ...」

なんとか頭を切り替える。
いつものルーティンであるスポーツ系ゲームで運動して。
シャワーを浴び、早めに布団に入る。
そういや、読んでない新聞も溜まってるし。
明日朝は早く起きないと。

布団を頭までかぶっていても、時折汐里が電話で笑ってる声がする。

少し寂しいけど、仕方ない。


自分でもこんなに依存するとは思わなかった。

元カノたちとも、こんなにベタベタ四六時中とかなかったし。
ベタベタされたら、あからさまに距離を取った。
自分のルーティンを壊されるのが、すこぶる嫌だったのだ。

汐里と結婚したのだって、恋愛感情が無いからこそ、そのルーティンが守られると思ったからで。

だから今のこの状態は、思いっきり予想に反する。



ふっと暖かい感触に包まれて、なんだかいい匂いがする。
手を伸ばして引き寄せる。

「...汐里」
「ひゃあ」

ひゃあ?

気がつくと、佳佑の布団に汐里を引き入れている。

「んー?あれ?」

なんで腕の中に汐里が?
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