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そぶりをやめて
第1章 0日婚 ~当日
日曜日の午前中、2人揃って届けを出しに役所に行き、無事入籍。

提出の少し前に、役所の前で婚姻届を持って写真を撮った。



画像の中の自分が、少し強ばった顔をしている気がするー。

なんとも、微妙な顔だわ。


汐里(しおり)は自分の顔にすこーしだけ加工を施す。

まっけーの顔は...このままでいいか。

いや、自分だけ加工してたら、バレバレか。

加工は諦めて、全体的にエフェクトをかけてぼやっと誤魔化しちゃえ。


試行錯誤して、30分ほどもかけてなんとか納得がいく。

入籍しました、の文字も小さく乗せてー。

こんなものかな。

「じゃ、送るよ〜!!」

「え?まだ送ってないの。おっそー」

リビングからほど近い寝室に向かって声をかける。
まだ引越し荷物の片付けをしている背中がちらりと見える。
向こうを向いたままの『まっけー』こと松岡佳佑(けいすけ)から、驚いたような声が返ってきた。

「だってー。写真がイマイチでさぁ。ね、ほんっとに、見なくていいの〜?」

「おー。いいから、早く送っといてー」

「うんー」

送るといいつつ、汐里はなかなか送信ボタンが押せない。

ふーーっ。

大きく一息ついて、えいやっとボタンを押した。

向こうでも音が鳴って、スマホで確認しながら佳佑がリビングにやってきた。

「時間かかりすぎー」

「だって!!どんな反応が返ってくるかと思うと...」

と、汐里が言い終わらないうちに、2人のスマホがピロピロピロっ!とヤカマシク鳴り響く。

2人ともが入っている、中学の同級生が集まるグループLINE。

瞬く間にコメントが次々と増えてゆく。

読むのが追いつかないぐらいだ。



今日の入籍を殆どの人が知らなかったのだから、無理もない。

ほんの2ヶ月ほど前の正月を少しすぎたあたりに、リモート同窓会として、久しぶりにパソコン上で集まった。

その時共にフリーだった佳佑と汐里が、そこからほんの70日ほど後に、入籍したと連絡をイキナリ送ったのだから。

「みんな驚きすぎだろ」

「いやー、そりゃ驚くよ〜」

笑って画面を見るだけの佳佑を見かねて、汐里がなんとか返事を返してゆく。

といっても、一方的にしかも端的に経緯を打つだけだ。
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