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そぶりをやめて
第5章 2ヶ月
別にそのボーカルの彼と結婚したかったとかではない。

けど、好みのタイプだし、理想にしてはいたかも。


はるか昔の元カレは、音楽はしないけど、細身で少し長髪。

その前は...。


いやいや。


佳佑は、なにやらストレッチなのか、体のあちこちを伸ばすようなヘンテコな動きをしている。

「やっぱりゴルフ出来なくなったのがイタイよなぁ」

最初は、仕事関係で始めたゴルフがキッカケだった。
得意先を集めた社内コンペがあって、プライベートで打ちっ放しの練習に通うようになり。
数年の間に、すっかり楽しくなってきて。
つい最近まで、趣味はゴルフというぐらいになってきたというのに。

今やコロナでそれどころではない。


ブチブチ文句をたれながら、箸を並べたり、お茶をくんだりしてくれてる。

ありがたや。

「走るのは?」
「だな〜。朝走るかなぁ」

その口ぶりからして、走らなそう。
やる気を全く感じない。

「たなっちも一緒にどう?」
「無理無理!絶対無理!」

汐里は、元々インドア派で、スポーツ全般が全くもって苦手。
長距離を走るのなんて、もってのほか。

「じゃあさ、コレやってもいい?」

佳佑が指差すのは、某フィットネス系のゲーム。
丸っこいリングを振り回すやつ。

「ああ、それね。どうぞどうぞ。良かったら使って〜」

一時は入手が困難だったそのゲームは、コロナで品薄になるよりももっと前、出始めにうっかり購入していた。

引越しの時、とりあえずこのマンションに持って来たものの、すっかりテレビ横の飾りになってしまっている。

「これ、気になってたんだよー」
「そうなの?早く言ってくれれば。でも、結構ムズいよ〜」

エラそうに言ってみたものの、ジツはサワリしかプレイしたことはない。
設定をミスったのか、初めの2ステージぐらいで汗だくになってギブアップした。

「じゃ、後で対戦な」
「な!!」

出来上がった料理をカウンター越しの佳佑に渡す。

豚肉とたっぷりキャベツの味噌炒め。
いい匂いで、ご飯が進みそう。

ついつい、汐里が好きなメニューを作ってしまう。

「対決とか、そーゆーゲームじゃないし」
「ほう。負けるのが怖いのかな〜?」

すこぶる嬉しそうな佳佑がムカつく。

「いいよ!じゃ、ご飯が終わったらね!」
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